「本のご紹介」第19回目の投稿です。
神奈川県議会議員の添田勝さん著の、「持続可能な介護保険制度の考え方」をご紹介します。
- 介護現場について、知りたい方
- 逆・介護保険について、知りたい方
- 新しい制度への自治体の取り組みについて、知りたい方
「逆介護保険」というのは、はじめて聞いたのですが、読んでみたらとても画期的な制度でした!
もくじ
政治家になって、介護の報われない現場を変えた、著者の添田勝さん
川崎市議会議員(宮前区選出) 行政書士 介護福祉士 公共政策学修士。
専修大学商学部 明治大学公共政策大学院 松下政経塾。学生時代は、アジア・アフリカ・中東など20か国以上を単身放浪。内戦や動乱により貧困や飢餓に苦しむ人々と接する中、福祉分野に興味が芽生え、同時期に曾祖母の介護を経験し、より関心が高まる。
元横浜市長 中田宏氏より「介護保険の政策調査の秘書に」と誘われ事務所に入所。その後、セントケア株式会社にて深夜訪問介護員として勤務、一晩で40軒以上回り、延べ2万人のオムツ交換。介護保険制度の不備で、現場が報われないことを実感し、自らが政治家になり制度を変えることを決意。ヘルパーのかたわら自費夜学で公共政策大学院にて介護保険政策について研究。松下政経塾にて、介護事業者への経営アドバイザーと政治家への介護政策指南。
2011年に川崎市議会議員に初当選し現在3期目。健康福祉委員や文教委員を歴任。逆・介護保険制度を提案し実現。同制度について、行政や大学、介護現場等で講演活動も多数実施。また、議員活動のかたわら、行政書士兼会社経営者として介護事業者へのコンサルタント事業も行っている。
Amazon.co.jp: 持続可能な介護保険制度の考え方 : 添田 勝: 本
こちらのプロフィールは、書籍が発行された2022年のものですが、2023年5月現在は、神奈川県議会議員で、逆介護保険を神奈川県全体に広げるべく奔走されています。
本の中身を少しだけ、ご紹介
第1章 川崎発!自立支援型介護 逆・介護保険の挑戦【理論編】
第2章 川崎発!逆介護保険の挑戦【実践編】
第3章 介護保険制度の変遷と我が国の高齢者を取り巻く状況
第4章 高齢社会だからこそ、シニアが活躍するとき
第5章 介護保険制度はこう変える
自立を支援すると現場は疲弊する!? 介護保険制度の矛盾
現状の介護保険は、「自立支援するだけ損」という、矛盾をはらんだ制度になっている。
つまり、ヘルパーが要介護者の自立支援に努力し、要介護度が改善するほど、得られる介護報酬は減ってしまうのである。
例えば、要介護度を3から1に改善させて、自立支援に努力した結果、得られる報酬が10万円以上も減ってしまうという。
逆に、努力せずに介護状態が重度化すれば、介護報酬が増える、というディスインセンティブになってしまっている。
まさに、高齢者を「生かさず殺さず」がいちばん得する介護保険制度になっているのである。
やっと生まれた「逆介護保険」とは
一言でいえば、「要介護度の改善にインセンティブをもたせる」制度。
具体的には、要介護度改善額の50%を還元するというもの。
それでも、介護職の報酬が減ることに変わりないが、半額でも返ってくるならば、要介護度改善への動機づけになる。
また、介護状態が改善すれば、なにより高齢者ご本人が自分でできることが増えて自信につながり、家族の負担は減少する。
行政にとっては、半額を還元したとしても、高齢者が重い要介護度のままでいるよりは、財政負担も軽減される。
逆介護保険制度は、まさに介護職と事業所、高齢者自身と家族、行政という三方良しの政策なのである。
要介護度改善率は、全国平均の約2倍
川崎市の逆介護保険参加者の場合、要介護度改善者は、全国平均の約2倍となった。
一方で、要介護度が悪化した人については、全国平均を下回った。
逆介護保険は、着実な成果が出ている。
逆介護保険、川崎市から神奈川県、そして全国へ
著者の添田勝さんは、介護の現場で働く中で、制度の不備を実感して、政治家になろうと決意されたそうです。
まずその志を尊敬しますし、松下政経塾の教えに従い「現地現場重視」を実践していらっしゃることも、すばらしいなと思いました。
本書は、制度を作る側の視点で書かれていて、新しい制度を作るために、いくつもの試行錯誤や、改善を繰り返しているのだということが、よくわかりました。
これからの時代、元気な高齢者が増えることは、社会全体にとっても良いことですし、介護事業者の方のやりがいに繋がることは、介護業界の救いになるのではないでしょうか。
課題もあるかと思いますが、この制度が神奈川県に留まらず、全国に広まっていったらいいな、と思います。
これまで介護に触れる機会が少なかったので、たいへん勉強になりました。
最後までお読みくださり、ありがとうございました!
気になった方は、ぜひ読んでみてください。
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