「本のご紹介」第8回目の投稿です。
トランスジェンダー当事者の宮川直己さん著、弁護士の内田和利さん監修の、「LGBTQの働き方をケアする本」をご紹介します。
- LGBTQについて、知りたい方
- 多様な働き方を推進する会社で、社員を管理する方(経営者、管理職、人事担当者など)
- 部下を持つ方
- チームで働く方
LGBTQの方との働き方をしっかり学べる上に、人と人との向き合い方を振り返るキッカケを得られます。
多様な働き方や、ダイバーシティを推進するために必要な知識とノウハウが、この一冊に詰まっています!
もくじ
この本を薦める理由
とても内容の濃い本だったので、オススメポイントがたくさんあります!
- LGBTQについての客観的事実が多数、掲載されている
- 世界と日本の現状、関連する法律、裁判の判例、治療内容などが丁寧に書かれていて、LGBTQを取り巻く現状を知ることができる
- 多数の事例が掲載されている
- LGBTQの方が、どのような困りごとがあるのか、どのように感じるのかを知り、自分ごととして、想像できるようになる
- 会社で想定される場面での、具体的な対応の手順や会話例が書かれている
- 実際に使えるヒアリングシートが付録されており、どのように行動すればよいかが分かる
- 自分が部下や同僚にカミングアウトされた場合にも、この本を読んでいれば、落ち着いて対応できそう、という安心感や心構えが持てる
- どこから読んでもOKな構成になっている
- 関連ページへの参照が記載されているため、自分に必要な章を拾って読みやすい
- 最初から読むと、重要な内容が何度か書かれているため、知識が定着しやすい
- 中立または、多面的な見解が書かれている
- LGBTQ側の立場だけでなく、カミングアウトされた側の立場、会社の立場、それぞれの気持ちや考え、とるべき行動が分かる内容になっている
- コミュニケーションにおける心理学的な知識やテクニックも多数掲載されている
- LGBTQでない人とのコミュニケーションでも使える
本を読む前に
LGBTQについて知っていたこと
恥ずかしながら、言葉の意味程度しか知りませんでした。。
これまでに、仕事で関わった方の中に、LGBTQかも?と思う方はいましたが、関わり自体が少なかったことと、仕事に影響することではなかったため、そのことには特に触れていませんでした。
本を読む前から、LGBTQの方が周りにいたとしても、偏見や先入観なく接したいという思いはありましたが、この本を読んで、ハッとすることがありました。
「自分は大丈夫」と思っている方にも、ぜひ読んでいただきたいです。
本の概要
著者の宮川直己先生
トランスジェンダー当事者でいらっしゃる、宮川先生。
株式会社マクアケデザイン代表取締役。
2016年より、心理学、脳科学、NLPを用いたコンサルティング事業をされています。
私は、あるセミナーで宮川先生と出会い、セミナーの課題に対するフィードバックやアドバイスをたくさんいただき、大変お世話になりました。
宮川先生は、とにかく優しい方です。
上辺の優しさではなく、痛みを知っているからこその優しさが、人柄に滲み出ているように感じています。
本書の文章にも、その人柄が表れてると思います。
章ごとのポイント
私が「大事だな」と感じたところを抜粋していますが、正しい理解が大切なので、ぜひ本を読んでいただきたいです!
第1章 LGBTQについての基礎知識
LGBTQとは、次の人々を指す総称である。
・レズビアン(Lesbian:女性の同性愛者)
・ゲイ(Gay:男性の同性愛者)
・バイセクシュアル(Bisexsual:両性愛者)
・トランスジェンダー(Transgender:身体の性別と自己の認識する性が一致しない人)
・クエスチョニング(Questioning:自己の認識する性や、性的魅力を感じる対象の性などについて、迷ったり揺れ動く気持ちを抱いている人)
2019年に行われたある調査では、12人に1人の割合で、LGBTQが存在するという結果になった。
「性はグラデーション」と言われるように、上記以外にもさまざまな人がいる。
「出生時の身体性」と、「自認する性」と、「性的指向」の組み合わせや、その濃淡・強弱により、一人ひとり、ニュアンスの異なるセクシュアリティが存在する。
SOGI(ソジ/ソギ)とは、「Sexual Orientation & Gender Identity(性的指向および性自認)」の頭文字をとった言葉である。
「SOGIによって差別やハラスメントを受けることのない職場作りを目指す」ことで、LGBTQを含む、すべての人の人権を守ることにもつながる。
カミングアウトとは、自分のセクシュアリティを自分の意志で誰かに伝えること。
アウティングとは、セクシュアリティを本人の承諾なく第三者に暴露する行為。「個の侵害」型のパワハラに該当する。
第2章 部下がLGBTQかも?と思った時のQ&A
あなたの周りにも、思い当たる方がいるでしょうか。
そんな時に、気になる答えが満載です。
本の中から3つ、ご紹介します。
第3章 カミングアウトを受けた時の対応
カミングアウトは黙って聴き、「話してくれてありがとう」「秘密は守ります」とだけ伝える。
NG対応リストを、よくよく読んで、自分の考えや発言を振り返っておけば、安心!
「冗談のつもりだった」では、許されません。
ただ、相手を大切に思う気持ちを持っていれば、発言に多少のNGがあったとしても、姿勢や表情、声のトーンなどで、そのことは伝わるもの。
「LGBTQはこういうもの」という先入観を手放し、目の前の相手に集中することが大切。
現在の日本の法律では、戸籍の性別変更には厳しい要件が定められているため、望んでいてもその手続きができない人もいる。
また、カミングアウトを強制・禁止することは、プライバシー権の侵害にあたる。
第4章 カミングアウトを受けた後のQ&A
トランスジェンダーの方の、外見や服装に関わること、トイレ利用に関わること、宿泊を伴う研修等に関わることなどについて、具体的に企業がとるべき対応が書かれている。
企業は、当事者の方への対応だけでなく、その周りの方のケアについても、真摯に対応することが求められる。
LGBTQの当事者同士でも、お互いの心情を完全に理解することは、難しいのだそうです。
人と人とが理解し合うためには、LGBTQであっても、そうでなくても、しっかり対話をすることが大切なんですね。
第5章 LGBTQもそうでない人も働きやすい職場作り
- カミングアウトしている人がいなくても「当事者はこの場にいる」前提でいよう
- 日頃から、自身の言動に配慮する
- 「パートナーは異性である」ことを前提とした言葉に注意!
- パートナーの呼び方に配慮するだけでも、アライであることを表現できる
- コミュニケーションは「わかろうとする」ことから始める
- 「わかってほしい」を求めると、「わかってほしい」が返ってくる
第6章 LGBTQ部下とのコミュニケーションのコツ
- 「セクシュアリティは大切な話だが”問題”ではない」と伝えよう
- 日頃から、自分自身の発言に隠れている、「良い・悪い」の価値観を意識してみる
- LGBTQの部下には率先して「ネガティブな自己開示」をしよう
- 自分からネガティブな自己開示をすることで、相手の救いになることがある
本を読んで
学んだこと
- 性に関わらず、人と人として接し、対話を重ねてお互いを理解していくことが大切
一点集中!実践したいこと
- カミングアウトを受けていなくても、「当事者が自分の周りにいる」前提で行動する
感想
「12人に1人」という数字は、自分の感覚よりも多かったので、驚きました。
これは調査の仕方によっても変わる可能性があるので、一概には言えませんが、自分の周りにLGBTQの方がいる前提で行動するための理由としては、充分だと思いました。
それから、「性はグラデーション」という言葉が印象的でした。
男、女、LGBTQ、は、単なるラベルであって、それだけでは表せないことが、ものすごくたくさんあるのだと分かりました。
少し自分に置き換えて考えてみると、同じ女性でも、
「かわいい」と言われて嬉しい人と
「きれい」と言われて嬉しい人がいる、ということの延長なのかな、とも思いました。
また、トランスジェンダーの方の苦悩についても、知ることができて良かったです。
私は、好きな洋服を着たり、お気に入りのアクセサリーを身につけると、気分が上がるので好きなんですが、それは、自由を享受できているということなのだと気付きました。
更に、いろいろな場面での会話例が載っているのが、ありがたく、自分でアレンジする際にも役立つと思いました。
いざ、その場面になったら、動揺して、ついNGワードを言ってしまうかもしれませんが、それが関係ないと思えるくらい、日頃から、人と人として信頼関係を築いていきたいと思いました。
正しい知識を得ることができ、大変勉強になりました!
まとめ
大切なのは、
- 正しい知識を身に付けること
- 相手を人として尊重する意思を言葉と行動で示すこと
- 丁寧に対話を重ねること
最後までお読みくださり、ありがとうございました!
気になった方は、ぜひ読んでみてください。
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